命と性の日記〜日々是命、日々是性

水谷潔が書き綴るいのちと性を中心テーマとした論説・コントなどなど。
 目指すはキリスト教界の渋谷陽一+デイブ・スペクター。サブカルチャーの視点から社会事象等を論じます。
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ポップミュージックが描く性の世界(12)
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    Bonnie PinkのLove is Bubble
    「性と愛とのアパルタヘイト(強制隔離政策)」


     一年以上のブランクを経ての復活企画です。はい。ご存じない方は2007年3月まで連載していたのでご参照を。

     今回取り上げるのはBonnie PinkのLove is Bubble。ある方からご紹介をいただいたのですが、「誰それ?洋楽?日本人?」と思ってしまうほど、JーPOP音痴の自分が怖いです。

    愛はbubble,愛はtrouble」と歌いだす歌詞。韻を踏んでキャッチーでよくできた歌詞。「おおっ、恋愛の空しさと面倒くささを実感させてくれる歌詞だろうな」と期待していると、「あなたを泡立てよう」「二時間だけお相手」「本気になるのはご法度、本気にさせるの」などの歌詞が登場。

     「ええっ、これって!そんなのあり?放送禁止にならないの?」と思ってしまった私です。これは映画「嫌われ松子」の主題歌にもなり、Bonnie Pink自身がソープ嬢の役で映画初出演だったとか・・・・。

     うーん、日本では売春を歌うと放送禁止や発売禁止になるはずなのに、どうしてならないのか?日本の社会では「ソープランドでは売買春は行われていない」という建前があるからなのでしょう。日本は売買春については驚くほど建前社会です。

     歌詞の詳細は「うたまっぷ」をご覧下さい。さて、この歌詞のすごいのは、ソープ嬢の「性と愛の分離発想」を見事に描いているところだと思うのです。私なりに表現するなら「性と愛とのアパルタヘイト(強制隔離政策)」女性にとっては、本来、性は人格的な愛と分離不可能なもののはず。しかし、「性と愛の分離」。それができなければ職業上不都合なわけです。あるいは、それを決意した上で就業しなくてはいけません。そのように愛をバブルと割り切らなければ、職業上、まさに愛はトラブル

     主人公はバブルのような愛を売り、代価として金銭を得るわけです。こうした売買春の末に、彼女が手にするものを彼女自身がどう評価しているかと言えば、歌詞の最後にあるとおり。「お金という恋人を手にしよう、お手軽な幸せを手にしよう」。泡のような愛と交換に得たものはやはり泡のような金銭という幸せ。男女の愛もお金も時がたてば、あるいは使えばなくなる泡のような消費財。男性との恋愛に深く継続的な幸せを期待できなくなった主人公の過去を想起させる優れた歌詞です。

     「売買春とは何なのか?」それが「愛と金銭の等価交換」でないことだけは明らかなようです。あえて言うなら、「愛という名前の泡とお金という名前の泡の等価交換」となるでしょうか?「男女がお互いのニーズの一致と合意の上で、性質の異なる泡を交換すること」それが売買春というシステムでしょう。

     男女とも大きな犠牲を払ったとしても最終的に得るのは泡に過ぎません。ようは「泡でもいいから」と割り切る男女の契約関係とも表現できるのでは?(売春せざるを得ない貧しさなどがある場合を別とすれば)売買春に関わる男女は、やがては消える空しさ、深まりも発展も望み得ない空しさから逃げることはできないでしょう。

     love is bubble というタイトルと歌詞は、性と愛の強制分離がもたらす底なしの空しさを表現しているように思うのです。「空しくたって、当人たちがよければいいじゃないか?」そんな反論が聞こえてきそうです。

    あの河合隼雄は言いました。「援助交際は魂に悪い」と。売買春の当事者たちには、笑われあざけられる言葉に過ぎないかもしれません。それは自分の価値観を無理やり他者に当てははめる横暴な態度と批判されるかもしれません。

     しかし、それは深い人間洞察をしてきた心理学者として「あなた自身もわかっていないかもしれないけれど、それはあなた自身も根底からゆがめ不幸にするのよ!それはあなたを本当の性と愛の喜びから、いよいよ遠ざけるものなのだよ!」という愛の言葉に違いないでしょう。

     
    | | ポップと演歌が描く恋愛と性 | 12:24 | comments(0) | trackbacks(0) | - |









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