命と性の日記〜日々是命、日々是性

水谷潔が書き綴るいのちと性を中心テーマとした論説・コントなどなど。
 目指すはキリスト教界の渋谷陽一+デイブ・スペクター。サブカルチャーの視点から社会事象等を論じます。
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"Ministry"の特集「牧師たちの失敗」がリアルで泣ける、そして、教えられる(2)
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     昨日の記事は、予想外の支持をいただき、拡散もしたのでしょう。アクセスは3000を超えました。読者が記事をどう受け止め活用するかを記者は100%コントロールすることはできません。ただ、記事の本意をくみ取っていただき、牧師批判や教会批判の材料に使わないで欲しいと願っています。それは、記事の意図に最も反することだからです。この点はどうか、よろしくお願いします。


     Ministry最新号の特集「牧師たちの失敗〜しくじりを教訓に」では、実際に失敗を体験された二人の牧師を取材しています。今日はそのお二人の事例について、教えらえたことを記します。

     一人目は、約30年の間牧師をされた後、辞められて、その30年間を失敗として自己評価しておられる方です。取材後記によれば、国内外二つの神学校を出られて周囲からは将来を嘱望された方であったとのこと。インタビュー記事からも、この方の神学的素養の深さや優れた知性を垣間見ることができます。

     様々な側面から、質問がされるのですが、「牧師という仕事と生き方を理解していなかった」ことが原因の一つであったと答えておられます。他の専門職にもあることでしょうが、牧師の場合は、特に、現場に出てからこうしたことが深刻な問題になります。ただ、それは珍しいことではありません。少なくともそれだけなら、辞めることはなかったでしょう。

     就任した教会の待遇面には驚きました。いくら独身で牧師館住まいでも、ありえない牧師謝儀(どうも月額数万円?)にびっくりです。正直、「その給与で、しかもバイト禁止かよ!」とブラック呼ばわりしたくなりました。ヘタレの私なら最初から招聘を断るか、就任してしまったら、迷わず転任をしたでしょう。信徒の未熟さや教会内の混乱も、かなりのものです。「別の教会に移ったら、牧師を継続できるのに」と不真面目な私は思うのですが、そうはなさらなかったようです。

     辞職後は復職を望まず、年齢的に普通の就職もできず、結婚もされずに歩んでおられます。この方は、記事の最後で、牧師を辞めた大きな理由を三つ語っておられます。その三つは、私にとっては、かなり意外なものでした。「召しが不明確だった」「現実の人間関係の破たん」「精神衛生上の問題」などではないのです。その三つに私は教えられました。これは、真面目で有能で純粋だったからこその理由だと感じたのです。そして、それは次の世代への教訓であり、キリスト教会の課題であると受け止めました。


     この牧師は匿名でのインタビュー記事ですが、もうお一人は、実名で取材を受けておられます。編集主幹の平野克己師の神学校時代の先輩で当時は寮長を務められていた方です。牧師となり、結婚して、お子さんも与えられながら、ノイローゼ、DV,離婚を経て辞任します。この経緯は実に痛ましいです。でも、ある意味、起こるべくして起こったという面もあり、目を背けてはならないと思いながら読みました。

     しかし、それで終わりではないのです。この方は、ノイローゼやDVなどの原因となる自分の問題と真摯に向き合ったのです。周囲の助けも受けながら、「厳格な母との母子関係」「怒りの根幹にあった見捨てられ不安」などに気づき、克服に向かいます。そして、別団体の牧師として復職を果たします。問題が起こってしまった後に、自分の本当の問題に向き合ったことによって、回復の道が開かれたということでしょう。この記事には、大きな希望があります。

     この事例は、現われは異なりますが、近年増加してきたパターンだと思うのです。不健全な親子関係や不幸な成育歴を持つ方が教職を目指します。そこから由来する課題がキリストにあって克服されていたり、遅くとも神学校時代に取り扱われていればいいのですが、なかなかそうはいかないのが現実のようです。

     その潜在的問題は、信徒との人間関係という牧会現場結婚生活という現場で、表出します。この復帰された牧師も結婚生活の中で「自分の知らない自分が、相手との関係性の中で掘り起こされ」と回顧し、その怒りの表出がDVとなったことを振り返っています。

     親子関係や成育歴の中で受ける傷は、誰もが大なり小なり抱えているでしょう。特に牧師家庭には、親子関係に独自の課題が生じやすいものです。結婚関係の中で自分の知らない自分が表出すること既婚者の多くが経験することでしょう。要は、程度問題だと思うのです。それが、結婚を破壊し、牧師の職務を不能にするレベルであるならば、何とか、当人や周囲が気が付いて、神学校入学前に対処するか、克服するまで、献身を延期できればと願います。

     教職者不足解消と教会維持と神学校維持が優先されるあまり、教職希望者の適正が検討されずに、当人の「主観的召し」が実質上のパスポート化してしまっているのでは?と心配になるケースを時々お見かけします。二人目のこのケースも、神学校入学前からノイローゼ気味なのは自覚されていたのですから、周囲がメンタル面や成育歴の課題を理解していれば、最初の挫折は避けられたのではないかと思えてなりません。私は、この記事がよい事例となり、教職志望者を送り出す教会、受け止め育成する牧師養成機関、牧師を迎え入れる教会の三者が、当人のメンタル面や成育歴について、必要と判断されるなら、専門家の助けも借りて、検討するようになればと願っています。
     

     成功者と評される牧師には、時に「成功者だから言えないこと」もあれば、「成功者故に見えていない自分」があります。しかし、この記事には、「辞めたからこそ、言えること」、「失敗したからこそ、見えた自分」、「失敗者だからこそ、見えたこと」が、記されています。その意味で、今回の特集は、これまで学べなかったことを学べる記事と言えそうです。闇に向き合うことなしには見えない真実闇に光を当てることによってでなければ見い出せない真理がこの特集にはあります。

     「アッパレ!それでこそ、"Ministry"」というのが最新号に対しての個人的評価です。自信をもってお勧めします。



    Ministry最新刊 28号の詳細はこちら!
    http://www.ministry.co.jp/book/view/282/

    明日は、藤掛明先生の「まとめに代えて」をご紹介。







     
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