命と性の日記〜日々是命、日々是性

水谷潔が書き綴るいのちと性を中心テーマとした論説・コントなどなど。
 目指すはキリスト教界の渋谷陽一+デイブ・スペクター。サブカルチャーの視点から社会事象等を論じます。
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24歳にして23児の父(1)問題視されるべき危険な技術転用
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     タイでマンションで養育されていた9人の乳児が保護された事件は、予想外の事実が判明してきました。「人身売買目的」との大方の予想を大きく裏切り、見えてきたのは、かなり特殊なこの男性の地位と状況、そして、その特異な家族観と生命観です。

     まずは、この男性、タイでは実名報道されており、某大企業の御曹司で資産家と判明しております。これなら、多くの子どもたちにも物理的な養育責任は果たせるでしょう。また、入籍しているかどうかは不明ですが、事実上の妻にあたる女性(タイのマンションにいた27歳の日本人女性)は、性転換手術で女性となった元男性なのだそうです。同性婚カップルが、子どもを願って、代理母によって子どもをもうけるのは、国際的には既に珍しいことではなくなっています。中国の代理母は、欧米の同性婚カップルの子どもを請け負うことが多いと報道されています。

     ですから、この事件の特異性は、ひたすら、「わが子の多さ」とそれを「短期間にもうけたこと」にあります。現在までに少なくとも23人の血のつながった子どもをもうけているのだとか。しかも、卵子提供者の女性は、アジア、欧州、南米にわたる多国籍で、逆に日本人女性はいないそうです。そうです。代理母を利用すれば、数年間で「23人のわが子」をもうけることが可能なのです。

     この日本人男性は、代理母仲介業者に対して、「100人から1000人の子どもをもうける計画」を打ち明けていたとのこと。どうも、本気で、実行するつもりらしいです。まるで、生殖技術系SF小説のようなことが現実に起こっているわけです。

     「事実上の同性婚をして、代理母によって23人の多民族児の父となった24歳の日本人資産家男性


     ここで、誰もが考えます。「この男性の目的はいったい何なのか?」と。100人から1000人もの血のつながった子どもを望む理由は、何なのでしょう。そこで、私なりに予想してみました。いくつかの仮説を記してみます。

    (1)一人少子化対策
     この男性、子どもの数なら、24歳にしてあのビッグダディーを上回っています。一夫多妻時代の王様や金持ちでも、数年間で23人はそうはないでしょう。この男性は、「子どもを産むことが社会貢献のひとつ」と語っているそうです。晩婚化、非婚化、少子化が国家的課題となっている中、資産家の彼は、個人的に多子家庭を願ったのか?

     しかし、どうも、子どもを日本に連れてきて全員を日本社会で育てる気は今のところはなさそうなので、この説は


    (2)現代版ナチス
     自分の優秀なDNAを可能な限り、後の人類に残そうとしているかもしれません。ヒトラーは社会的進化論に立ち、優れた遺伝形質を後世に残し、劣った形質は絶つことが、人類の進化に貢献すると考えました。これがいわゆる「優生思想」です。彼はヒトラーのごとく、優秀な自らのDNAを多く残すことを願ったのでしょうか?もし、そうなら、これは「現代版ナチス」です。

     しかし、この男性は、お金を使って優秀な形質を持つ日本人女性から卵子提供を受けていません。また、今のところ、優れた遺伝形質の持ち主が卵子提供者として選ばれたという報道もありません。ですから、この説も撤回です。


    (3)即席アブラハム
      アブラハムは祝福の基となるとの約束を受けて、その成就に生きました。約束の子が与えられたのも晩年に、たった一人でです。その子、イサクの家庭も男児は二人のみでした。そして、アブラハムから三世代目にようやくヤコブの父とする12人の男子がそろって、12部族がスタートします。アブラハムが大いなる民族となる12人の男児を得るのに、三世代を要しました。

     しかし、彼は、数年でそれを実現したのです。23人のうち、12人が男児だそうです。いかにも短い時間で大きな成果を見ることを願い、その実現を追求するインスタント時代らいい出来事です。アブラハムは見ずとも信仰によって信じて、存命中はその成就の一部しか目撃できませんした。それに対して彼は、数年でそのスタートを目で見ており、今後も今のあり方が許容されれば、存命中に、「自分の部族」を見ることになるでしょう。

     この事件は、当初、人身売買でなければ、財産相続目的だろうと言われていました。タイでは贈与税がないそうで、タイの国籍を取得して、多くのわが子に相続を有利な形でさせるためだと予想されました。しかし、弁護士の話では、子どもたちは「後継者」とのこと。最新号の「週刊ポスト」掲載の記事は、自分の事業を多人数の血族に後継させ、「一族経営」にしたいのでは?と予想しています。そうであれば、信仰とは異なる「産業系祝福の一族」「大いなる企業の民」の「」となることを願っているのでしょう。「即席アブラハム説」については妥当性を残していきたいと思っています。

     もう、お分かりでしょう。予想される彼の目的は、代理母本来の目的から大きく逸脱をしています。代理母の目的は、言うまでもなく、不妊カップルの不妊状態を克服することです。しかし、この代理母という生殖技術は、それ以外の目的にも、応用できてしまいます。

     多くの国では、核兵器開発に転用可能な機械は、特定国家への輸出が法律で禁じられているようです。そうです。危険な転用可能性ある場合、あることが国家間で禁じられるものです。しかし、危険な転用可能性をはらんでいた代理母という技術は、国際間での合意や調整が不十分なままです。

     この危険な技術転用をすれば、一夫多妻社会の権力者男性にしかできない「短期間での子だくさん」が可能となります。さらにその向こうにある目的は現時点では不明ですが、どう考えても、これは代理母という生殖技術の目的逸脱ですし、たとえ違法行為でないとしても、これは、「代理母の乱用」、「生殖技術の危険な転用」として道義的責任を問わざるを得ません。


     今回はこの特異な事件の持つ目的を予想してみました。今回の記事がこの事件の持つ特異性や不気味さを言語化し、問題を整理する助けになっていれば感謝です。次回は、この件の倫理的問題について記してみます。
    | ヤンキー牧師 | 生命の尊厳・生命倫理・医療倫理 | 17:25 | - | - | - |
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