命と性の日記〜日々是命、日々是性

水谷潔が書き綴るいのちと性を中心テーマとした論説・コントなどなど。
 目指すはキリスト教界の渋谷陽一+デイブ・スペクター。サブカルチャーの視点から社会事象等を論じます。
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代理母出産・障碍児受け取り拒否(2)代理中絶が持つ三つの違反性
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     続きの記事を書こうとしていたら、昨日には二つの新たな情報が飛び込みました。

    代理出産児引き取り拒否騒動、父親に性犯罪歴

    「ダウン症児拒否」は誤解、代理出産依頼の豪夫婦が反論

      父親にあたる男性が、女児に対しての性犯罪歴が複数あるというのは、誰もが心配を抱くでしょう。もちろん、性犯罪歴があっても、既に克服していれば問題がありません。しかし、現実には、こうした性的指向は克服が困難であることはよく知られています。また、この男性の妻は中国人女性であり、いわゆる「中国人花嫁仲介ビジネス」を介しての結婚らしいです。このこと自体が悪いわけではないでしょうが、父親、あるいは家庭人としての資質や適性については、心配要素とされてしまうでしょう。

      夫婦の反論がなされていますが、もし、この反論が事実であるとしたら、仲介業者が、依頼者に一切を内緒にして、ダウン症の男児を闇に葬り、死産ということにして、円満にビジネスを成功させようと企んだ疑いもあります。

     今回の件で、問題視されているのは、受け取り拒否はもちろん、その家庭で妊娠人工中絶が要求されたことでありましょう。通常、代理母が代理機能を果たすのは、「妊娠継続と出産」です。その二つができない女性のためにいわば子宮をレンタルしているるわけです。しかし、今回の件では、「中絶」までがその代理機能に含まれかねなかったことが問題なわけです。


     私はこのことには三つの違反性があると思います。一つ目は、社会的違法性です。タイでは、性犯罪による妊娠を除けば、人工妊娠中絶は違法なのです。多分、代理母と業者が交わした契約内容には、障害が発覚した場合の中絶は記されていなかったと思われます。たとえ、契約書に明記されていなくても、仲介業者が中絶を要求したことは、タイにおいて社会的に許容されることではありません。

     二つ目は、生命の尊厳への違反です。これは二つの意味で生命の尊厳に違反していると言えるでしょう。一つ目は、言うまでもなく障碍を持った胎児の命の尊厳です。代理母は命を生み出す目的に同意して、代理母を申し出たのですから、中絶を要求することは、命の誕生という本来の目的に反するわけです。

     さらには、代理母自身の命の尊厳に関わります。中絶が違法であるタイには、多分、「闇中絶業者」が存在するのはほぼ確実です。代理母には中絶という選択肢も可能だったはずです。しかし、闇中絶は費用が高額で、医療技術も低く危険性も高いのです。ですから、この女性の生命自体をリスクにさらすことになったはずです。妊娠継続にも出産にも生命のリスクはありますが、闇中絶はそれより遥かに高いリスクなのです。その意味で、代理母自身の生命の尊厳にも反すると言えるでしょう。

     三つ目には宗教的自由の否定です。タイの一般市民は仏教への信仰心が厚いです。生命を神や天からの授かりものと考え、その尊厳を重んじるのは、伝統的宗教に共通することです。日本の水子供養などは、逆に特殊な事例と言えるでしょう。報道によれば、今回の代理母が中絶を拒否したのも、違法だからではなく、宗教的理由なのだそうです。

     代理母に「代理中絶」を求めたことが、代理母の持つ闇の部分を、多くの人々に知らしめたと言えるでしょう。「代理母への中絶要求」、それは、社会的には違法性があり、倫理的には生命の尊厳に反し、信仰的には宗教の自由に反することです。この問題を考える上でこの三点が参考になれば感謝です。
    | ヤンキー牧師 | 生命の尊厳・生命倫理・医療倫理 | 21:11 | - | - | - |
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