命と性の日記〜日々是命、日々是性

水谷潔が書き綴るいのちと性を中心テーマとした論説・コントなどなど。
 目指すはキリスト教界の渋谷陽一+デイブ・スペクター。サブカルチャーの視点から社会事象等を論じます。
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育てよう健全牧師(57)篠田麻里子牧師
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     このシリーズも今日でとりあえず最終回。最後に登場するのが、「篠田麻里子牧師」。この牧師、同名のアイドルのように「美人過ぎる女性牧師」ではありません。実際はほとんどが男性牧師であります。

     では、男性牧師たちが、「篠田麻里子牧師」とは、どういうことでしょうか?篠田麻里子と言えば、以前の総選挙か何かでのスピーチで発した「潰すつもりで来てください」がインパクトありました。

     そして、この発言から思いついたのが、「篠田麻里子牧師」。それは、「潰すつもりで来てください」ならぬ「潰れるつもりで来ている」牧師のこと。つまり、厳しい昨今の状況を把握しており、牧会現場に遣わされていく際に「潰れるつもりで来ている」牧師のことであります。

     実際に20〜30代の神学校を卒業された教職が、かなりの確率で、潰れているのが現状です。団体によっては、「休職中」が非常に多いです。うつ病やパニック障害で休職したり、働きを退いたりする若い伝道者の多さには、心が痛みます。留学という形で、現場を退く若い教職などは、本当に学びのためなのか疑問視されることも多いです。召命観がもとから怪しいのか、現場に来て失ったのか分かりませんが、召命の問題で、働きを去ることもありようです。人間関係は大変で、形は転任なのですが、実質上は、牧師と信徒が信頼関係を築けないまま、働きの場を移しているケースも。

     これらの厳しい現状をよく心得てた上で、潰れることも想定した上で、強く明確な召命観をもって現場に来るのが、「篠田麻里子牧師」であります。

     経済が右肩上がりで、終身雇用であった頃は、企業も人材育成をしたものです。未熟な新入社員を教育して、一人前にして、退職まで、40年程度働くようにしていました。慢性不況と終身雇用の終わりで、余裕のない企業は人材育成をしません。また、企業側が育てても、他の企業に移られてしまうのですから、しない傾向に拍車がかかっているのでしょう。そういうわけで、近年の人材使い捨ての悲惨な労働環境が生まれているように思うのです。


     教会もよく似た状況にあるように、感じます。慢性財政難と慢性教勢不況により、多くの教会や団体には、新卒牧師を育成する余裕や体力がないかのようです。神学校を卒業して、教職試験に合格したら一人前ではありません。現場に出てから、一人前になっていくものです。最初の何年かはインターン、研修中のようなもので、教会の皆様にたくさん忍耐していただいて、育てていただくのが伝道者です。

     かつては、それができる体質の教会や役員会も多かったようですが、最近は厳しいようです。寛容さという愛が乏しいのか?神学校を卒業した完成品がやってくると思っているのか?すぐに結果を、あるいは質の高い奉仕を求めているのか?顧客満足度で牧師を評価する発想なのか?受け入れる教会側に寛容さや未熟さを受け止める心の余裕がなく、それが人間関係のストレスとなり潰れる要因の一つとなっているのでは?

     藤掛明先生によれば日本社会において、最もストレスの高い職業は「皇室」(だから精神疾患になりやすい)で、第二位は「牧師」なのだそうです。やはり、教会の側の寛容さがないと、精神疾患になりすいのも納得です。また、過度のストレスは、罪や逸脱行為となって現れることがあります。また、若い既婚者子持ちの教職の場合は、経済的なストレスがかなり高く、人間関係のストレスとのダブルストレスは、極めて厳しいわけです。


     パウロ(昭和熱血伝道者)がテモテ(平成ヘタレ系伝道者)にしたように、先輩牧師が、メンターとなり、暖かな理解と共感をもって、弱さと未熟さと葛藤を受け止めながら、励まし導いて下されば、いいのですが、なかなか、そうはいかないことも。不幸にもメンターが、牧師病の一つである「対話不能症」や「指導病」に犯されていると、話も聞いてもらえず、信仰という名の「根性論」を聞かせれて、さらなるストレスを受けてしまうケースもあるとかないとか。

     ましてや、携帯やメールなど、顔を合わせない、生身ではない方法で人間関係を持ってきた世代です。人間関係上のトラブルの対処能力や、生身の人間との信頼関係構築能力は、昭和の伝道者と比べれば、かなり劣るのは、当然です。ベテラン牧師や信徒から見れば、これはあり得ないほどの未熟さと映るかもしれません。これは、一般企業と同様です。それでも、「時代の子の宿命としての未熟さ」を理解し、一定寛容でないと、神様が立てられ、多大な祈りと犠牲によって、現場にまで送られてきた器を潰しかねません。

     そんなわけで、教会内人間関係ストレス経済ストレス先輩牧師からのストレスなどに苦しめられ、時代の子である当人の側には、昭和の伝道者のようにそれを乗り越える強いメンタルや処世術などがありません。近年の若手伝道者の潰れやすさはある意味当然でしょう。問題指揮をお持ちの団体は既に、教職の交わりや育成システムなどを改善して、この課題を克服する努力をしておられるようです。


     本来は、現場である教会の信徒側の意識変革が必要なのでしょうが、なかなか困難なのが現状でしょう。特に、世代間のメンタリティーの差異は、埋めがたいものを感じています。特に、ベテランが思い描く「昔ながらの伝道者の姿」が、若い伝道者に多大なストレスを与えていることが理解できないようです。

     ぜひとも第二テモテの1章を読まれて、パウロのテモテに対する語り掛けを学んでいただければと願います。潰れそうであったテモテがやがてパウロが最も信頼する伝道者となった秘訣はここにあると思うのです。今日の若きヘタレ系伝道者?も、パウロがテモテに語ったように、暖かな理解をもって、愛し、励まし期待していくなら、テモテのようになれるのです。

     いろいろ書いてみましたが、実際に牧会現場に出ていく側にとっては、現場の教会の現実は厳しいのです。テモテにとってのパウロのようなベテラン役員やメンター役の先輩牧師だとは限りません。

     もし、現場の一線で活躍している牧師が、篠田麻里子なら、伝道者希望の若者や若き神学生たちに、こうスピーチすることでしょう。

     潰れるつもりで、来てください!

      私自身も、「明確な召命観」と「聖書的な理想」、そして「現場の厳しさへの覚悟と対処能力」、この三つをもって、来ていただければと願っています。

     (これは、翌日の加筆ですが)「潰れないつもりで、来てください。潰れないような準備をして来てください」


    〈後記〉
     この記事についてはさっそく苦言をいただきました。
    「篠田麻里子牧師」再考・・・・
    http://voiceofwind.jugem.jp/?eid=569

     苦言はごもっともで、「潰れるつもりで来てください」を、文字通り読めば、牧師という聖なる労働者の人権侵害でしょうし、牧師を潰すような残念な教会の現状肯定と受け止められても仕方ありません。誤解を招きやすい記事なのは確かなので、記事に違和感や不快感を持たれた方にはお詫び申し上げますと共に、この記事の意図を明確に言語化しておきます。

     この記事についてですが、表面上は教職志願者に対して、現場の厳しさを知った上で、来るようにとの勧めです。「潰れるつもりで来てください」の意図を正確に言い換えるなら「潰れる可能性のあることを知った上で現場に来てください」ということです。教職を取り囲む現実への無知や働きに関しての楽観論への警告です。特に召命観の確かさを問いかける意図があります。決して、「特攻隊的意識で、現場に行け」と勧めているのではありません。知人の若手教職が、毎年、何名も精神疾患で休職や退職をしているのですから、とても、そんなことは言えません。この記事はむしろそうした「教会内労災」「教団内労災」の現状をお知らせし、牧師の労働者としての人権を擁護する意図をもって記しました。自分で改めて読み直してみて、表現上は、そのように読めないだろうと思い、反省をしています。

     実は上のことは、この記事本来の意図ではなく副次的なものです。この記事の第一の意図は、若手伝道者を待ち受けるそのような悲惨な現状を知らせることを通じて、受け止める教会の側の意識変革教職への愛の配慮を求めるものです。そのことを直接、信徒に向けて発信するのではなく、(直接ですと自覚できないことも多いので)自らを若手教職の立場におくことによって、教会員の側の課題を客観視していただこうとの意図があって、このようなコンセプトと記事となりました。
     失礼ながら、同様の手法によって、ベテラン牧師に対してもの若手教職への接し方について、検討を願うものです。

     ですから、本心においては、苦言をいただいた記事が意図することと同様と受け止めていただければ幸いです。字義通りに読めば、聖書的にも倫理的にも人権的にも間違った内容となっていますが、後記に記した意図に立っての記事として、お読みいただければと願います。聖書全体の教理に立って、特定の聖句が意味確定されるように、この記事を単独で読まれて、意図を確定するのでなく、これまで本ブログが記してきた内容全体に即してこの記事の趣旨を受け止めていただければと、実に勝手ながら、思ったのですが、それが間違っていたと痛感しています。F.Bに同時投稿しているのですから、初めてお読みになる方もおられますから。

     今後はこうしたご迷惑をかけぬよう正確な表現を心掛けてまいります。
    | ヤンキー牧師 | 「育てよう健全牧師」シリーズ | 18:13 | - | - | - |
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