命と性の日記〜日々是命、日々是性

水谷潔が書き綴るいのちと性を中心テーマとした論説・コントなどなど。
 目指すはキリスト教界の渋谷陽一+デイブ・スペクター。サブカルチャーの視点から社会事象等を論じます。
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自己愛性信仰障害の時代(7)〜霊的リーダーにおける不健全自己愛の現われ
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     すべての人間は自己愛者であります。健全な自己愛者であるクリスチャンは、キリストに出会い神の愛を受け止めれば、その自尊心は満たされ、それが、心理的基盤となり、信仰的向上心をもって、神と隣人を愛する歩みへと向かいます。しかし、不健全な自己愛者は、その自尊心が最優先であり、底なし沼状態であるため、自尊心の僕となり、自尊心充足自体を信仰生活の目的としながら、なおかつ自尊心は決して満たされないという空しく悲惨な歩みへと向かうわけです。

     そして、この両者は、牧師、宣教師、宣教団体の働き人、クリスチャン実業家など、霊的なリーダーについても、全く例外ではないはずです。リーダーになっていくのは、もちろん神様の召しによるものでしょうが、人間側には、純粋な動機だけでなく、混ぜ物がありがちです。そして、それは自尊心と関係する場合も少なくないと思うのです。

     あるリーダーは、自分の学歴や家柄や職歴などに劣等感を持っています。キリスト教界という舞台なら、自分もリーダーになれて、その劣等感を解消し自尊心を満たすことができます。また、牧師子弟である男性牧師の献身の背景には、父親に認められて、両親の意向を実現して、自尊心を満たしたいとの強い思いが認められることもあるでしょう。さらに、人から尊重され、他者に対して権力を行使できることで自尊心を満たしたい思いが、それを実現できる霊的リーダーの地位を目指した動機に潜んでいる可能性もあると思うのです。

     そして、「リーダーシップのダークサイド」を読んでの私の見解ですが、これらの混ぜ物があるからといって、「召しが偽物」「リーダー失格」と判断してはならないでしょう。私は「不純物混入=偽物→失格」とは考えません。混ぜ物の方が主成分(本物かつ中心動機)でそれを「召し」と虚偽申請しているなら、確かに偽物で、リーダー失格でしょう。というか、そもそも召されいないわけです。

     しかし、多くの場合、神様はそうした混ぜ物というというダークサイドをも用いて、人を働きに召し、主の働き用いて下さるのです。混ぜ物は克服され、献身の動機は純化されるべきでしょうが、「混ぜ物の存在自体が、召しの真偽や適正の有無を決定するものではない」というのが、今の私の見解です。

     「リーダーシップのダークサイド」が示す類型の中で、自尊心充足というダークサイドを持つリーダーに相当するのが、自己陶酔型リーダーです。聖書中の典型例はソロモンです。同著の著者は、ソロモンを「不自然な王位継承過程」、「若く経験不足であること」「伝説的成功を治めた父」、「誕生後に罰を受けて死んだ自分の兄か姉の存在」が、ソロモンに強い劣等感を与えただろうと推測します。そのために、彼の努力の焦点には、自分自身があることを聖書は「私」という言葉の連続で示しており、ソロモンが父親以上の存在になろうとしてたと考察します。

     著者のよれば、若く臆病なソロモンは、成功を経て、自己意識が肥大しすぎたため、「王は自分のために、馬と妻と金銀を増やしてはならない」という聖書の三原則を破ってまで、自己実現に向かいます。それでも満足を得られなかったのです。最後は、ご存知の通り、ソロモンは偶像礼拝にまで逸脱して、国家を衰退と混乱に陥れます。

     著者は自己陶酔的リーダーの特徴を、ある引用を用いてこう紹介しています。「それぞれ、強烈な出世欲と、大げさな空想と、劣等意識と、外的評価と賞賛への過剰依存を、さまざまな組み合わせで持っている」と。また、もう一つの特徴として「他者から搾取する点であり、自分の欲望を満たし、自己を顕示するために他者を利用する」との引用をしています。私が思うに、これは不健全な自己愛者の特徴と全く同じです。これは、程度は違うのでしょうが、ネット上に記されている自己愛性人格障害の特徴とも非常に似ています。

     リーダーシップのダークサイドはジム・ベーカーについて「自己陶酔的な人格障害の典型的犠牲者」と評しています。この記述が、「専門医が、彼を診断したら自己愛人格障害と診断される」という意味かどうかは分かりません。しかし、このシリーズのテーマである自己愛とか自尊心充足という視点から見ると、ジム・ベーカーの成功と破綻は、まさに、「自己愛性信仰障害」に相当するでしょう。有能でカリスマ性があるので、多くが彼に心酔し、働きを支持し、エスカレートし続ける彼の自尊心充足を多大な犠牲を払ってまで、実現してしまったのだろうと思われます。

     どうも、ソロモンは最初は、劣等感もあって謙遜に神様の御心に沿ってスタートしながらも、やがて、成功と名声を得たために、不健全自己愛者に転じてしまい、神の戒めを破り、国民を利用してまで、底なし自尊心を満たすに至ったわけです。一方、ジム・ベーカーが、医学的に「自己愛性人障害」であるなら、牧師になる前から、強烈な不健全自己愛者であったわけです。リーダー就任の前であれ後であれ、主に立てられたリーダーも、自己愛の持ち主であり、それがもたらすリスクを完全には免れてはいなのです。

     いいえ、リーダーは、神様から委託された立場や権威によって、自尊心充足のために支持者と財政を利用できるからこそ、より一層、誘惑が大きいのです。牧師にとって、教会が急成長し、多くの心酔者を得て、冷静で主体的判断ができる信徒は既に去り、自分個人の決定が即教会の決定という状況は、どんなにか自尊心充足に好都合でしょう。自尊心のために教会を利用する誘惑は、計り知れないものかと想像します。

     そして、実際に、その誘惑に負けて自尊心充足を目指して、イエスマンばかりの役員会を形成し、主体的判断可能で愛の忠告ができる信徒や部下には去っていただき、自己決定=教会決定となる状況を作り出そうとするケースも時折耳にします。さらに、人権侵害やマインドコントロールの手法を用いてまで、信徒を支配、利用、搾取して、自尊心充足を目指し、教会を小帝国化していくなら、それはまさにカルトでありましょう。

      牧師の「自己愛性信仰障害」の最悪のパターンの一つは、ソロモン王と同じです。ソロモンが、「馬、妻、金」についての戒めを破ってまで、自己目的実現を目指したように、最終的に「地位、女性、金銭」についての逸脱を犯し、働きを去っていくのです。その意味において、ソロモンの成功と失敗は、現代において、リーダーシップを学ぶ際の最高の反面教師と言えるでしょう。そうなれば、一教会の問題ではすまなくなります。地域のキリスト教会全体や所属団体全体への信頼を損ないかねません。

     牧師の「自己愛性信仰障害」と信徒のそれとは、それがもたらす影響の深さ大きさが桁違いです。牧師の地位と権威は時に、いとも簡単に教会内に、信徒搾取構造を構築することを可能にしてしまいます。短期間で教会全体を私物化し、自己目的に奉仕する組織への変質させてしまうのです。特に、ある能力に秀でているかカリスマ性のあるリーダーが眼に見える形で成功を治めた場合は、上に記してきたような誘惑は極めて強烈で、一定の成功後や引退を考えるべき晩年に、教会を私物化するような逸脱に走る危険性はかなり高いように観察しております。

     さらに残念なことに、信徒の多くは、眼に見える形での成功を神様の承認と祝福と解釈するので、無謀で不健全と思える牧師の意向や計画に対して、反対や慎重論を唱える事は、神と権威への反逆のように感じてしまいます。もはや、ストップができない状況になってしまいます。それを牧師の権威乱用と判断できる教職と信徒は既に教会を去っているからです。牧師の不祥事や破綻でストップしないなら、信徒は教会に留まっている限りは、その後も牧師の個人目的のため、「聖なる御名」を名目に、利用され搾取され続けることとなります。これは、まさにソロモンやジム・ベーカーの再現です。

     今後もこうした事例が繰返され、キリスト教会全体が、一般社会と教会内の若い世代から信頼を失い、著しい衰退傾向に向かわないために、少しでも止めることが可能になればと願い、今回の記事を記しました。一連の牧師不祥事カルト問題、あるいは教会の権威主義化や私物化の中には、「自己愛」をキーワードにすると読み解けそうなケースも多いように感じています。

     もともとの不健全自己愛者が、霊的リーダーになっていくこともあるでしょうし、自尊心充足に好都合な立場ゆえに、リーダーとなってから、不健全自己愛者に転ずるケースもあるでしょう。そして、その果てにあるのが、様々な形となって現われるリーダーの不祥事、逸脱行為なのかもしれません。

     この種の問題に重荷を持つ方、真剣に取り組みたい方、その危険と被害の中にある方々には、「リーダーシップのダークサイド」と「満たされない自己愛」など自己愛を解明する書物を、読まれることをお勧めします。

     そして、考えていただけたらと願うのです。自らが為すべき意識変革を、今の立場でできる具体的努力を、リーダーのためにささげるべき執り成しの祈りの言葉を。

     そう、主がお立てになった尊いリーダーを「21世紀のソロモン」や「日本版ジム・ベーカー」で終わらせないために。
    | ヤンキー牧師 | 自己愛シリーズ | 20:11 | - | - | - |
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