命と性の日記〜日々是命、日々是性

水谷潔が書き綴るいのちと性を中心テーマとした論説・コントなどなど。
 目指すはキリスト教界の渋谷陽一+デイブ・スペクター。サブカルチャーの視点から社会事象等を論じます。
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自己愛性信仰障害の時代(5)〜自尊心に仕える教会生活
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     前回は、不健全性自己愛者は、欲求の階層の最上階に自尊心欲求が位置しているとの仮説を紹介しました。この仮説を、自己愛性信仰障害に当てはめると以下のようになることも記しました。

    〈自己愛性信仰障害の病理〉
    仕えているのは、主なるキリストではなく、キリストの代わりに主となっている自らの自尊心。
    我を忘れて職業や奉仕に打ち込む事はなく、常に自尊心充足志向で、自我に執着し続ける。
    人生を導く五つの目的」などありません。人生を導く目的はたった一つ、自尊心の充足のみ。
    現すのは神の栄光でなく、自らの栄光であり、最終目標は、自己栄光による自尊心の満足。

     こうした病理に犯され、自尊心の僕と化したクリスチャンは、あらゆる手段を講じて、「環境保護」ならぬ「自尊心保護運動」に励むわけです。「聖霊に満たされた歩み」ではなく、「自尊心を満たす歩み」を目指していくのです。

     この信仰姿勢は、神様と教会を自尊心充足の手段にしているのですから、言うまでもなく本末転倒です。これは、神と教会に仕えているのでなく、神と教会を自尊心充足のために自分に仕えさせているという構造です。また、不健全自己愛者は、神とその言葉に従い続けることができません。なぜなら、神と聖書の言葉に従うには、一定自尊心を犠牲にする覚悟が必要だからです。前々会は罪について記しましたが、どの教理についても自尊心を損なわないレベルまでしか、受け入れませんし、ましてや従うことなど期待できないでしょう。

     不健全自己愛者神と深く交わることもできないようです。本当の意味であるがままで神の前に出られません。絶対者である罪なき肩の前で、自尊心が傷つくような自分を見せられるからです。さらには、自尊心充足のため、常に他者からの承認や賞賛を必要とするために、人や組織や所属に依存する傾向が強く、信仰者として自立できません。

     困ったことには、自分の失敗や過ちや不十分さを認めると自尊心が損なわれるので、自分の非を他者に責任転嫁します。あるいは、人前で自分を責めて「あなたが悪いのではない」との声を勝ち取ります。こうした態度は、責任感のない態度と評価され、教会の中でいつまでも信頼を得られません。結局、自尊心が傷つかない程度でしか、罪と失敗を認めず、より本質的な罪を認めて悔改めないので、本質的に変りません。同じ失敗、過ち、罪を繰り返しやすくなります。

     やがては、教会内で「困ったちゃん」や「トラブルメーカー」的扱いを受け疎外感を覚えたり、周囲が自尊心を満たしてくれず不満を抱くようになります。そうなるといよいよ、不健全な自己愛は暴れ出し、非常識な要求やそれが適わぬ場合の逆切れなどで、周囲に迷惑をかけはじめます。攻撃的ではないパターンですと、逆にうつ的になったり「傷ついた」との言葉を漏らしたりで、無意識のうちに教会をコントロールするようです。

     かくして周囲は、自尊心の保護と充足に利用されたり、振り回されたりし続けるです。いいえ、きっと神様も利用され続けるのでしょう。牧師は、自尊心保護と充足のために献身したのではないので、いいようのない徒労感を覚えます。愛をもって助けようとする兄弟姉妹たちも、途中から愛を注いでも何の効果もがないことを悟り、これまた困惑と徒労感を覚えます。

     それはそうでしょう。自尊心の僕は、牧師夫妻や兄弟姉妹から受けた愛を全て、自尊心という主人の満足のために献上するのですから。注がれた愛は全部、当人の成長、自立、悔改め、愛への応答のためには用いられず、自尊心充足目的に使用されるのです。

     ちょうど、先進国から貧困国に提供されるODAの多くが、貧困と飢餓に苦しむ庶民には届かず、独裁者や支配層に搾取されているように、牧師と兄弟姉妹の献身的な愛さえも、自己愛性信仰障害に苦しむ当人には届かず、独裁者であり支配者である自尊心に搾取されているのです。かつて日本国民の血税からフィリピンへODNとして送られた大金の多くは独裁者マルコスの一族に中間搾取され、その象徴的風景として、イメルダ夫人のありえない靴のコレクションが報道されました。そのように牧師夫妻や献身的な兄弟姉妹の血を流すような愛さえも、当人の人格と魂の奥底に届く前に、独裁者である自尊心中間搾取されるのです。

     クリスチャンの心の中で、そんなことが起こっているとは、普通は思いません。ですから愛情深い牧師夫妻は、忍耐と寛容をもってその人が教会を離れることなく、成長するようにと願い続けます。真面目なクリスチャンたちは、距離を置くことが愛に反するように感じるので、効果がないことを悟りつつも、同じような愛の支援を継続します。その結果、さらに自尊心充足に利用され続けて、一種の「霊的搾取の被害者」となっていきます。いつまでも関係性を変えることなく、エスカレートする要求に応答することが、献身的愛だと考え違いをするなら、ついには愛する側が破綻します。ひどい場合は、牧師夫妻は心身の病になり、真面目信徒は自分の愛の乏しさを責めて信仰的ダウンとなります。

     そうなれば、自己愛性信仰障害者は、別の牧師、交わり、教会に移り、同じことを繰返すのです。自分を信頼してくれそうな牧師がいる別の教会に集うようになり、自分がいかに愛されず、受け入れられず、冷遇されてきたかを牧師に語ります。こうした場合は、すぐ真に受けずに、前の教会の牧師に連絡を取り、両方の言い分をお聞きになり、判断されるべきでしょう。当人なりの本気の訴えを安易に信じたら、大変です。前にいた教会の牧師と同じ苦しみを味わうからです。

      一方、すべての不健全自己愛者がこのように破綻に向かうとは限りません。中には、自己愛が高慢さにつながらず、熱心さにつながり、教会内で信頼を得て、やがては、教会運営に決定権を持つ場合があります。特に教会会計に大きな影響持つほどの経済力、社会的地位や高学歴の持ち主ですと、それに惑われ、周囲は熱心さが自己愛に由来することを見抜けないままになりやすいようです。

     このタイプの自己愛者が同じ教会に留まり続け、歴代牧師夫妻を何人も破綻させながら、自尊心充足の歩みを継続していくケースも稀にお見受けします。つまり、自己愛が自分自身の教会生活を破綻させるのでなく、自己愛充足のネックとなる牧師を破綻させるのです。結果として、破綻をさせるのでなく、自分が教会内での実権を握り、牧師を自己愛充足の僕として仕えるように支配するケースもあるようです。

     こうなると、この自己愛者信徒に、理不尽な言動や逸脱行為があっても、他の信徒は、あたらずさわらず状態となり、牧師の指導も及び腰になりがちでです。それが、教会全体の問題となりながらも、対処できぬままになります。牧師が数年毎に異動になるのが恒例の教会には、この手の課題をお見受けすることもしばしば。教会が一旦、こうした体質に陥ってしまうと団体の支援や教団の介入もなかなか功を奏しません。余計なお世話とは思いますが、この記事をお読みの神学生あるいは伝道者志望の読者の方々におかれましては、こうした厳しい現実を想定され、現場に出て行かれますようお勧め申し上げます。

     そこで、提案です。お互いは、聖書が命じるように、知性を用いて愛そうではありませんか。「仕える」とは相手に「利用されること」ではありません。「惜しみなく与える」とは、相手に「無制限に搾取させる」ことを意味しません。「あるがままで愛する」とは、「他者からの愛を利用し搾取し、主の体を苦しめるその罪あるがままで容認し、放置し、戒めず、悔改めに導こうとしないこと」とは、全く異なるはずです。

     知性をもって、思索して、前者と後者を混同しないことかと思います。区別した上で、後者とは異なる前者とは何かを聖書から思索して、実行に結び付けていくことかと思うのです。とりわけ教職の皆様におかれましては、その尊い献身の生涯を、不健全な自尊心充足に捧げ、浪費されることのないよう、賢明なご判断をと願ってやみません。

     罪は神への応答性を喪失させ、自尊心を主とし、当人も教会も神様さえも、これに仕えさせ、今日、主の体である教会を混乱させ、弱体化させているのかもしれません。悪魔はそのように、時代の文化や情報を用いて、そうした罪の働きによって、自尊心を肥大化させているのでしょうか?今回の記事が「今、教会で何が起こっているのか?」「これまでにない理解不能なクリスチャンをどう理解すればいいのか」の一助になればと願っています。

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