命と性の日記〜日々是命、日々是性

水谷潔が書き綴るいのちと性を中心テーマとした論説・コントなどなど。
 目指すはキリスト教界の渋谷陽一+デイブ・スペクター。サブカルチャーの視点から社会事象等を論じます。
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脳死移植、自己の延命と他者の脳死を願うことの葛藤
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     脳死臓器移植の問題が話題になるたびに、テレビに登場する一人の理学療法士。脳死肺移植を待ちながら31歳の若さで亡くなった池田真一さん。彼が生きる事を願い綴った携帯小説が話題となり、マスコミに取り上げられるようになりました。彼の死後も遺族やミュージシャンである仲間達が彼の意志を引き継いで、臓器移植の啓蒙などをしておられます。

     あるテレビ報道で知ったのですが、池田さんが脳死臓器移植を願いながら常に葛藤してきたことがあります。それは、脳死臓器移植を願うということの意味することに伴う矛盾です。「自分は延命を願い、同時に他者の死を願う」という矛盾です。脳死移植での延命を願うことは、臓器提供意志を持つ誰かの死を願うことと表裏一体なのです。池田さんはこのことの矛盾に葛藤したようです。

     臓器提供者は自主的な善意をもっているのだし、臓器提供のために他者を殺したり死期を早めているわけでもないのだから、葛藤し悩むのは間違っているという見解もあるでしょう。むしろ、多くの移植希望者はそう考えることでしょう。

     しかし、池田さんは自らの延命のために他者の死を願う自己中心性のような内面的問題に葛藤されたのかと思います。池田さんはある意味、医療人らしいいのちに対する真摯な思いを持っておられたとも考えられるでしょう。

     脳死臓器移植というシステムを「他者の善意と犠牲によって自分の延命が可能となるシステム」とは受け止めきれず、「自主的善意に基づくとは言え、自分の延命のために他者の死を願わざるを得ないシステム」しての面を意識せざるを得なかったのでしょう。

     ですから池田さんが存命中、訴えたことは、「ドナー登録しましょう」ではなかったのです。「脳死臓器移植の事を知って欲しい、もっと考えて欲しい」。それが池田さんの願いだったようです。このことはきっと、単なるドナー増加を超えて、一人でも多くの人がいのちについて真剣に考えるチャンスを与えてくれることでしょう。

     記憶は定かではありませんが、脳死問題に関するある書物に次のようなSF物語が紹介され、脳死問題の倫理的是非にかかわる本質を示唆していました。ストーリーはこうです。

     未来の人類は、医療の発展により、半永久的に生きるようになるのです。死に至るような病気もすべて、臓器移植等の移植医療によって治療をされます。まるで、故障した部品を正常な部品に交換することで、機械が機能し続けるように、移植医療によってすべての人が半永久的な生命を得ることなったのです。

     では、臓器提供者は誰かといえば、奴隷や下層階級や貧しい人々ではありません。そんな不平等や搾取理想の未来社会にはありません。その社会では抽選で10人に一人が臓器提供者となるのです。選ばれた人は、他者のいのちのために、喜んで、わが身を犠牲にして、臓器を提供します。つまり10人に一人は臓器提供のために自主的に死を選ぶのです。理想の未来社会においては、そのような自己犠牲が賞賛され、社会全体が臓器提供者を尊敬し、当人も栄誉と考え決して死を厭わないのです。

     医療の恐るべき発展、不平等も搾取もない社会、自己犠牲を惜しまぬ高い倫理性、「技術」、「社会」、「倫理」のすべてにおいて、好ましいものを獲得した人類です。そして、このシステムでは誰一人、意に反した行為を強制されず、臓器提供を受ける側も提供する側も両者が幸福なのです。これは、最大多数の最大幸福を実現しているはずなのです。

     しかし、このSFが描く社会や「永遠のいのち実現システム」を、多くの読者は理想の社会とは思わないでしょう。言葉にできない違和感や葛藤を覚えるでしょう。なぜでしょう?それは池田さんが持っていた葛藤に共通する要素かも知れません。

     以前の記事を再度、ご紹介申し上げます。本件について思索する参考になれば感謝です。
    「臓器移植法改正に際して」
    http://blog.chiisana.org/?eid=1198391
    | | 脳死問題・臓器移植 | 07:48 | comments(0) | trackbacks(0) | - |









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